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「卯ノ花さんちのおいしい食卓」のネタばれ感想

「卯ノ花さんちのおいしい食卓」

著・瀬王みかる/集英社オレンジ文庫/2015年発行

 

あらすじ

主人公の藤宮若葉は施設で育ち、身寄りがなく、高校卒業後は工場勤務をしてきた。

そんなある日、工場は倒産し、自宅であるアパートは火事になってしまい、行くアテもなく途方に暮れていたが、大家の息子水口のお陰で、薔薇屋敷と呼ばれる家に居候をすることになる。

薔薇屋敷にはイケメン兄弟と女の子が一人住んでいるようだが、水口には女の子の姿が見えていないようだ。

居候先の薔薇屋敷の住人にはなんだか秘密があるらしかった。

 

以上があらすじです。

続刊があるのですが、私は1巻しか読んでいないので、1巻にのみ焦点を当てて、話を進めます。

 

 

ストーリーは王道

最近、公募ガイドという雑誌で知ったのですが、物語には型があり、その一つに、「損失や欠如を回復する話」というものがあるのだそうです。

この「卯ノ花さんちのおいしい食卓」はまさに損失や欠如を回復する話に当てはまると思います。

何故なら、登場人物は誰もが損失や欠如を抱えているからです。

 

 

登場人物が抱える欠如や損失とは?

まず、主人公の若葉は幼少時に遊園地で母親に捨てられ、家族がいません。

つまり、若葉の欠如=家族がいないということになります。

この物語は要約すると、一人ぼっちの若葉が家族を得るまでと言えると思います。

ただ、家族を失うという欠如は他の登場人物も共通していて、凪は政治家の愛人の息子でしたが、政治家の正妻の息子の急死により、母親と引き離され、父の元で教育を受けることになります。しかし、愛情を掛けられることはなく、孤独な10代を送ることになりますが、大学受験に失敗したことにより、朱璃と共に逃げ出します。

母親を失い、愛情を失った凪は、朱璃によって愛情を再回復させます。

こうやって書くとBLのようですが、本文を読むとそういう感じはしません。

作品に登場する「月(ユエ)一族」は長命で優れた美貌を持ち、記憶を改ざんするといった特殊な能力を持ちますが、長く生きるからこそ愛する人々を失い続けるという宿命を背負っています。

本文では月一族の朱璃の過去については語られませんでしたが、月族の八重姫の過去について書かれていて、やはり家族を失っては得て、失うの繰り返しであることが書かれています。

特に、八重姫は実年齢は300歳でも見た目は10歳ほどの少女で、大人にはならないことから、1人で生きることが出来ずに、常に誰かの手が必要な状態なので、深刻です。

ただ、他者の記憶を改ざんする能力は自由に使えるようなので、本当に1人になってしまっても妖怪ぬらりひょんのように、勝手に上がりこみ、飯を食うくらいは出来るかもしれませんが、それって嫌だなー。

 

 

ファンタジー×食べ物の設定が面白い作品

小道具にツナマヨおにぎりなどの食べ物が使われているので、一応、食べ物系のジャンルなのかなーとは思いつつ、ファンタジー要素も強いです。

食べ物系と思って読むと、食事の描写があっさりとしているので、食べ物と絡める必要あるかなーと思いますし、ファンタジーとして読むと、食べ物絡めなくてもよくね?と思ってしまいます。

食べ物が重要なのではなくて、家族の象徴として、皆で食べるシーンこそが大事な小説なのかもしれません。

ただ、現代を舞台にしたファンタジー×食べ物の設定の小説はあまりないので、新鮮な感じで読めます。同系統の話としては、ポプラ社からばんぱいやのパフェ屋さんというお話があるみたいですが、私は未読です。

ストーリーも設定も描写も分かりやすくてシンプル。

描写がシンプルであっさりめなので、シリアスなシーンも重くならずにスルスルと読めます。

 

 

シリアスなシーンでもスルスルと読める訳

私なりの解釈ですが、五感(臭いとか触感)の描写があまりないからかも。

どうも五感を書くと、読み手はそれを想像するので、リアルに感じるのだとか。

シリアスなシーンもリアルに感じたら、気が重くなるだけですが、リアルでなければ、そんなこともなく読めるんじゃないかなーと思った次第。

ただ、読んでいて、難しい言葉もないし、引っ掛かることなく読み進められるので気持ちいいです。

もしかして、声に出して読みながら推敲してるのでしょうか。

 

 

まとめ

この物語は設定もストーリーも王道だと思います。

王道ということは定番ということで、多くの物語に共通する要素を持っているということで、基本のストーリーの型の勉強には最適だと思いました。

この物語は欠如や損失→出会い→トラウマの克服→欠如や損失の回復で成り立っていると思います。

これはどの物語にも当てはめようとすれば当てはまるもので、一応、上記を意識して、物語を作れば、ちゃんとしたストーリーにはなるはず。

偉そうに書いてますけど、私はこれを知ったのはつい最近。もっと早くに知っていれば、もう少しマトモな小説を書けたのにと思います。

個人的には作者プロフィールに書かれていた別名義のペンネームが気になります。