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【2次創作】WIXOSSアン小説6(完結)

第1話を読んでいない方はこちら↓からどうぞ

aisakayo.hatenablog.com

 それから、杏はセレクターバトルに明け暮れた。

 1勝した後に2敗し、後がなくなったこともあれば、2勝した後に1敗したこともある。

 なかなか3勝出来なかったが、元々、負けん気が強いほうだった上に、ジャンヌのカードを出るという願いを叶えるためにバトルにのめり込んだ。

 ジャンヌがどのように杏を守るのか見当もつかなかったが、今は3勝することだけを目標にし、放課後や休日は街をさまよった。家にいる時はジャンヌと一緒に他のルリグやウィクロスの研究をした。

 

 そして、ある日の夕方、とうとう杏は3勝をした。

「勝った……」

 杏が涙ぐみながら、呟くと、ジャンヌは淡々と、

「杏。私は弱かった。勝手だった。だから、誘惑に負けてしまった」

「ジャンヌ? 何を言っているの? 願いは?」

「あなたは夢限少女となった。騙してごめんなさい」

「ジャンヌ?」

 次の瞬間には、杏は白い部屋にいた。

 そこには、自分と同じ年頃の少女がいて、白いシンプルなドレスを着ていた。なんというかそこに立っているのに、現実感を感じられない不思議な雰囲気を持つ少女だった。

 少女は微笑んだ。

「ようこそ。白窓の部屋へ。私は繭」

「ここはなんなの?」

セレクターバトルに勝ったあなたはルリグとなったの」

「ルリグ……」

「全ての夢限少女はルリグとなるの。そして、ルリグはセレクターの肉体を手に入れ、人間に戻る」

「それじゃ、……萌は夢限少女となって……ルリグとなり、萌の体には元のルリグが入ったということ?」

「ウフフ。その通りよ。今、あなたのルリグだったジャンヌがあなたの体で何をしているのかを教えてあげる」

 繭がそう言うと、壁の一部がスクリーンとなり、自分と萌が映った。

 どのような仕組かは分からないが、まるでテレビ中継を見ているかのように映像は鮮明だった。

 

 ジャンヌとなった杏と萌は空き教室にいた。

「まさか先輩が萌を呼び出すなんて。萌の言うことを聞いてくれる気になったの?」

 萌が問いかけると、杏は、

「そろそろ萌のフリをやめたら? あなたは私と同じ元ルリグだということは分かっている」

「! 杏先輩は……」

「今頃、白窓の部屋に行き、どこかのセレクターのルリグとなっているでしょうね」

「まさか萌と昔みたいに仲良くなりたいとか願ったってわけ?」

 杏は冷たく淡々と告げ、萌はシニカルな笑みを浮かべた。

「杏が叶えたのは私の願い」

「どういうこと?」

 瞬間、杏は強烈な一撃を萌の腹に見舞った。

「杏の痛みをあなたに返す。杏は萌を信じて、耐えたけれど、私は受けたものはきっちり返すし、もう2度とこの体は傷つけさせない」

「こんなことしたら、あなた、捕まるわよ?」

「本当にそうかしら?」

「どういうこと?」

「杏は旧家のお嬢様だってこと知らないの? 親は地元でも権力者なのよ。もしあなたが誰かに言えば、私は体についた傷を皆に見せて、前にリンチを受けたことがある。今度も殴られそうになったから、抵抗しただけって言うわ。そうしたら、あなたもタダじゃ済まないわよ?」

「私はただ萌の願いを叶えただけ」

「嘘。杏を傷つけて、喜んでいただけ。杏が傷ついたことを萌が知ることも願っていたでしょう」

「そうよ。その通りよ。そうじゃなきゃ、やってらんないじゃない! せっかく願いが叶うって思ったのに、今度はルリグにされて、自分は乗っ取られて、挙句、他人の体で暮らさなきゃいけないんだから!」

「だから、何? 願いを何かに叶えてもらおうとした私たちの弱さが招いた結果。もし、次、杏に何かしたら、今度はもっと容赦しない」

「旧家のお嬢様だからって……」

「それだけだって思う? 杏がルリグとなったのは今日じゃないの。数日前のこと。ここ数日間、私は色々な証拠を記録に残した。それを元の私の体に入ったルリグに預けた。私に何かあったら、あなたの悪事も私の体に入ったルリグがネットとを通して、証拠を拡散してくれるわ。言っておくけど、私の体に入った元ルリグはあなたと違って善良なの」

「嘘……」

「本当」

 

 ここで映像は途切れた。

「萌はどこなの?」

「さあ」

 杏が尋ねても繭は微笑みで返し、教えてはくれない。

「ところで、ジャンヌの願いを叶えた気分はどう?」

「どうかしらね?」

「あなたは騙されたのよ。憎くない?」

「まさか。感謝しているくらいだわ」

 杏が微笑んで言うと、繭はとてもつまらなそうな顔をした。

「まあ、いいわ。あなたはルリグとして、新たなセレクターの元へ行くの。暗いカードの中で暮らすの。次に萌と会えるのはいつのことかしらね?」

 繭が言い終わると、ブレザー姿だった杏は頭にリボンを付けた袴姿の衣装となり、白窓の部屋から飛ばされるようにして追い出され、黒い空間の中を自分の意志とは関係なく飛ばされ、カードの中と思われる場所に辿り着いていた。

 とても暗く、何も見えない。

「萌もジャンヌもこの暗闇の中に最初はいたのかしら……」

 時間がいくら経ったかはカードの中なので知らないが、いくらか寝ていたと思う。そして、薄明りで目が覚めた。

 薄明りは徐々に光となり、カードの向こうに1人の少女がいた。

 ショートヘアで賢そうな少女だった。

「名前は?」

「……ふたせ……文緒。私は元ルリグだったから、夢限少女のことも知っている」

「そう。話が早くて助かるわ。私はアンよ」

 文緒はウィクロスをモチーフにした小説を書いているのだという。

「私は元の文緒のために書いている。でも、今は続きが書けない。私は続きを書きたいだけ。だから、バトルを続けているの」

「そう。それなら、私もルリグとしてお手伝いしてあげるわ」

 ジャンヌが杏を守ろうとしたように、杏のために、他のルリグとバトルを続けたように、アンも文緒のためにバトルをすることにした。

 そして、いつか再び、人間に戻ったら、人間に戻ったジャンヌと萌に会い、一緒に遊びに行くのだ。

 

 

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