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とりあえず、ペンと紙さえあればいい

趣味の創作を中心に色々書いてます。

エヘ近未来ハートフルメシ小説『カブトムシの巨大幼虫の照り焼き』

俺の名前は田中宇留都羅(たなかうるとら)。25歳のしがないサラリーマンだ。

2015年頃に、キラキラネームブームというのがあったらしく、その頃に生まれてしまった俺に両親がキラキラネームをつけてくれた。

名前だけの出オチ野郎と化した俺はいつもみんなの笑い物で、今の会社に就職するまで、面接でただひたすらに名前をイジラレ続けた。

もう2040年だというのに、俺のような名前がいまだに一般化しないのはどういうことなのだろうか。

今の会社は名前をイジラレることはないから、とても平穏だ。

会社で俺は32番と呼ばれている。他の連中も皆、番号だ。

現在、俺は終電に乗り、家へと向かっている最中。

朝になれば、会社に帰る日々だ。週に3日は一晩中会社にいる。

最初の頃は家が住まいだったような気もするが、今ではワンルーム8万円の仮眠室である。

会社にシャワーとベッドをつけてくれれば、俺は家に寝に行く必要もなくなるというのに。

早く本当のお家である会社に帰りたい……。

会社に帰れば、些細な仕事のミスを皆で仲良く、2時間くらい罵倒し合うんだ。

電車を降り、歩いて30分の寝室へと向かう。

家に辿り着き、ワンルームマンションの扉を開けると、暗い部屋の照明がいきなりついた。

「! なんだ」

「お帰り、お兄ちゃん!」

目の前にいるのは田舎の地元で大学生をしている妹の瀬羅月(セーラームーン)である。

「!? なんで、ここにいるんだよ!?」

「あれ? 今日から東京で観光するから、お世話になるねって連絡したよね? お母さんから合鍵もらってきたんだよ」

「そうだったか」

全く見ていなかった。

「私、お兄ちゃんに、あれ? 妹が今日はいるはずなのに家が暗いのはなんでだ? って思ってほしかったのに。それより、お兄ちゃんは顔色が悪いね。今の仕事キツイんじゃない?」

「いや。そんなことは全くないぞ。皆、とても仲良しだし」

「そっか。ならいいけど。私ね、料理作れるようになったんだ」

「そうか」

「今は人工知能が色々な仕事やるから、やっぱり就職が決まらなかったの。だから、私、料理やセラピストとかカウンセラーとか人じゃないと出来ない仕事に就くことにしたんだ。お兄ちゃんはちゃんとした会社に就職出来て良かったよ」

「ああ。そうだな」

俺は人工知能を開発し、必要な知識をプログラムし、差別的な発言や悪質な思考をしないように教育する仕事についている。

現在、人工知能がかつてデスクワークと言われた仕事のほとんどをやるようになった。俺が今している仕事は数少ない人間が従事出来ているデスクワークだ。

そのため、花形の職業とされているが、実際は俺の仕事を行う人工知能も存在するため、人工知能との過酷な競争に晒されている。

なんとか人間が開発しているというのをウリに商売をしているが、無報酬24時間稼働の人工知能と戦うため、労働時間を長く、人は少なく、給料は安くが我が社のモットーとなった。

そのためか、人間関係は濃密で、俺は23番の男と13番の男と一緒に、社内の自販機からコーヒーを買ってから、翼をくださいを小さな声で歌うのが日課となっている。

瀬羅月(セーラームーン)は立ち上がると、

「もう深夜1時近いし、さすがにご飯、食べたよね?」

「お前は?」

「私、夜7時にここに来てから、疲れて寝ちゃったからまだ」

「俺も食べるよ。今日は仕事が忙しくてまだ食べれてなくてな」

「そうなの? 大丈夫なの? 随分、遅いんじゃないの」

「大丈夫大丈夫」

「そう。それじゃ、今、パッパッと作っちゃうね」

30分後に出てきたのは俺の大好物だった。

「はい! カブトムシの巨大幼虫の照り焼きだよ!」

「おー! これだよ、これ!」

皿にはカブトムシの巨大幼虫の照り焼きが2匹盛られている。そして、白飯に豆腐の味噌汁という献立。

「どうかな?」

「俺、好きなんだよ、カブトムシの照り焼き!」

10年くらい前に地球の食糧難解決のため、虫食が普及した。

最初は食べるのを躊躇したが、今では病みつきだ。

プリプリとした弾力のある身に、醤油とみりんで作られた照り焼きのタレがよく絡み、ごはんによく合う!

「本当にお兄ちゃんってカブトムシの幼虫が好きなんだから」

「ありがとう、瀬羅月(セーラームーン)。俺、元気出たから、明日からまた頑張れるよ」

「お兄ちゃんの目に全く輝きがないけれど、頑張ってね!」

俺は明日からまた会社に帰り、13番と23番と一緒に翼をくださいを歌うんだ。

 

                                   END

 

タイトルで内容が分かったとは思うのですが、ゲテモノをダメな人がもし読んじゃった場合は本当にごめんない。