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『異世界人in地球』傾国ラフィアの場合

Earth


昨今、私たちが住む地球に異世界から様々な人や生き物が流れついてくるようになった。

何故、彼らが私たちの住む地球にやって来たのか?
理由のほとんどは、「気がついたら、地球にいた」「いつの間にかいた」とまるで元の世界で神隠しにあったかのようなものがほとんどで、何一つ原因が分かっていない。

最近では異世界人たちが住んでいた元の世界と私たちの世界を区別するために、私たちの世界を、「地球界」と呼ぶようになってきた。

異世界人たちはどのような人々で、どのような世界に元は住んでいたのかを知るために彼らへのインタビューを開始した。

今回、取材するのはラフィアさんである。

元の世界ではその美貌から、王の側室となり、国家財政を破たん寸前に追い込むほどの浪費家であった彼女だが、現在は多摩川にて粗末なバラックでホームレス生活をしている。

地球にやって来た異世界人たちは地球に適応するためにも5年間は地球生活トレーニングや金銭といった国の公的な保護を受ける。

そのため、地球に来て2年目のラフィアさんはバラックに住む必要はないのに、何故、今のような生活をしているのかに迫った。

 

 

 

ホームレス生活の訳

多摩川の竹林の中に、いくつもの粗末なバラック小屋が現れ、スラム街のような様相を呈している。

ラフィアさんの住まいもその中の1つで、室内に上がらせてもらうと、布団、服、化粧品しかない。

床に正座していた目の前の女性は22歳前後の妙齢の女性で、筆舌に尽くしがたいほどの美しさを持っていて、この人がラフィアさんだと一目で分かった。

 

――今日はよろしくお願いします。

 

うむ、苦しゅうない。なんなりと聞くとよいぞ。

 

 ――えーと、まず異世界から来た人たちは国からの保護を受けられるので、普通はこういう所には住まないのですが、何故、ここに住んでいるのですか?

 

普通の家に住んでも追い出されてしまうからじゃ。前の家は風呂場の水を閉じなかったから、家中を水浸しにしたためにカビを発生させたり床を腐らせたりしてしもうた。その前の家はボヤ騒ぎで追い出さたのじゃ。ここなら、ガスも水道もなから、使いたくても使えぬじゃろう。ゆえに、騒ぎにはならなくて済む。

 

――結構、ずぼらですね。ここって川の増水で家が流されたり、強制撤去されることもありますよね?

 

そうじゃのう。何度もある。じゃが、ここを離れるわけにはいかぬ。前の住まいを台なしにした賠償金を毎月少しずつ払わないといけぬから、普通の家に住めるような金銭的な余裕がないのじゃ。

 

――そうですか。水出したら、閉じないとですね。

 

ハッキリ言ってしまうと、面倒は全て女官がやっていたものじゃから、片付けたり、閉じるといった当たり前の習慣がないのじゃな。金を触ったこともないから、数えることも出来ぬ。欲しいといったら、なんでも手に入ったのじゃ。だから、わらわはこっちの世界に来てからも金銭感覚がないものじゃから、買い物がうまく出来ぬ。

結局、片付けや掃除洗濯も何度も教えられたが出来なんだ。なにせ、一度出した水を閉じるということ自体が身につかなかったのじゃ。そのせいで、水道代も馬鹿にならなんだ。

 

――大変ですね。

 

全くじゃ。城では口で言えばなんでも済んだし、口に出さずともなんでも周りの者が気を利かせて済ませていたのじゃ。今、そのツケが回ってきたようじゃ。普通の家に住もうとも風呂や台所は水浸しになったり、ボヤ騒ぎを起こして住めなくなるだけじゃからのう。これ以上、賠償金を増やすわけにはいかぬ。

 

――こっちの世界の男の人たちがラフィアさんにお付き合いの申し込みとかしなかったんですか?

 

あったぞ。大物政治家からどっかの社長という輩までのう。じゃが、誰もがわらわの浪費についていけず、手を切られてしもうた。

 

 

 

前にいた世界での暮らしぶり

――先ほどの話の時点からすごかったですけど、前にいた世界の国もそれで財政破たん寸前に追いやったんでしたっけ。

 

そんなこともあったのう。わらわがちょっと「あれ、可愛いのう」と言うだけで、王は国中から似たり寄ったりの物を買い集めたり、作らせたり余計なことをしたのじゃ。宝石商から100個もネックレスを買って、わらわに与えたこともあった。ねだれば、なんでも出てきたから、金というものは井戸の水のように湧くものじゃと思うておった。

 

――えーと。側室になったのが何歳の頃でしたっけ?

 

15じゃな。

 

――その頃からそういう生活ですか?

 

そうじゃ。

 

――側室になる前はどんな生活を?

 

貴族じゃな。領地が広くて、祖父は大臣にもなった。

 

――随分と裕福なんですね。

 

そうなのかのう。

 

――王様との間の子どもは?

 

おらぬ。わらわも1人や2人いればよいのにと思ったのじゃが、どうしてものう。

 

――そうでしたか。でも、王様との仲はすごくいいんですよね?

 

当然じゃ。

 

――王様の奥さまとは正直、どうなんですか?

 

どうとは?

 

――その。仲はいいんですか?

 

会ったことがない。表立って何かやられることもやることもなかったぞ。王妃の子が次代の王になるのは決まりきっておったから、王妃には余裕があるし、元々、王と王妃の仲も激悪と評判だったのじゃ。

 

――そうなんですか?

 

そうじゃ。王が死去してしまえば、わらわはどうなることやらじゃな。

 

 

 

現在の主な収入源

――えーと。聞き辛いですけど、現在は国からの援助金以外に収入はあるんですか。

 

ある。稼がないと賠償金が支払えないからのう。

今、わらわは恋愛カウンセラーをしておる。

 

――国を財政破たんにまで追い込むまで、王様に貢がせたラフィアさんにピッタリですね! 具体的にはどういうことをしてるんですか?

 

ここにやって来た迷える婦女子どもの話を聞き、道を示すのが仕事じゃ。

 

――ありがとうございました。

 

 

 

オフレコの話

私はICレコーダーを仕舞うと、ラフィアさんは真剣な表情で、

「ところで、主は恋愛をしたことはあるか?」

「えーと。少ないほうですね。学生時代に1人と社会人になってから、1人くらいですね」

「それでもよいわ。恋愛とはどんなものじゃ。とくに略奪愛と不倫愛と復活愛について語れ」

「え?」

私は絶句した。そんな経験したことがない。

ラフィアさんは悲しそうな表情で、

「わらわは元の世界では美しかったゆえに王の側室として、愛され、国家財政を破たん寸前にまで追い込んだだけじゃ」

「は、はい」

「つまり、恋愛はしたことがないのじゃ。もう一度言うが、ただ、美しかったから、王に召されて、勝手に貢がれただけじゃ。じゃが、人はわらわを手練手管を弄し、王から王妃を奪い取った悪女をイメージし、略奪愛と不倫愛と復活愛の相談ばかりに来る」

元々、王と王妃は仲が悪いわけで、家庭内離婚状態だったのだろう。そこにラフィアさんが側室になったのだから、不倫やらに悩む女性たちと違い、愛されるために特別な何かをする必要はなかったのだ。

「そうですか」

「ハッキリ言って、恋愛経験のないわらわでは荷が重いのじゃ。じゃが、無下にすれば、変なことをしそうな輩が混じり、無下に出来ぬ」

「恋愛カウンセラーって名乗らないほうがいいんじゃ……」

私の指摘に、ラフィアさんは頷きながらも、

「そう思うが、恋愛相談が金を得るのに手っ取り早いのじゃ。延々と何時間も話を聞くだけの時はいいのじゃが、具体的なアドバイスを求められるとにっちもさっちもいかず、誤魔化すので精いっぱいじゃ。のう、主の恋愛の体験談を語り、今後、略奪愛だのの相談に来る連中にどうアドバイスをしてやればいいか答えろ」

「えー」

私は結局、答えることは出来なかったが、ヤフー知恵袋教えて!gooを教えてあげた。

ラフィアさんはニコニコしながら、懐からスマホを取り出した。

「あの……スマホの充電はどこで?」

「隣の住人がスマホの充電用の電気をくれるのじゃ。スマホは国から持たされるから、手放すわけにはいかん。ほれ、主。早速、ヤフー知恵袋とやらにアクセスいたせ」

そう言って、私にスマホを渡したのだ。

「ええ!?」

「わらわが恋愛経験が一切ないことを世にバラすでないぞ。それは営業妨害というものじゃからな」

私は成り行きで、ヤフー知恵袋にアクセスしてあげながら、この人はこんなにも美しいのにここで一生を過ごすのだろうなとしみじみ思った。